ベトナムビジネス

ベトナムでの会社設立について

ベトナムで起業するには、法人を設立しなければなりません。
今回はその種類と方法を紹介していきます。

法人の種類を決める

ベトナムの会社の種類として一般的なのは一人有限会社、二人以上有限会社、株式会社とあり、主な違いは出資者の数です。

一人有限会社 出資者一人のみ
二人以上有限会社 出資者二人から最大50名
株式会社 出資者最低3人、最高は規定なし

その他、合同会社や個人事業主という選択肢がありますが、無限責任となり、あまり一般的ではありません。
株式会社は3名以上の株主が最低必要で、株主総会の開催や設立3年間の株式譲渡の条件が厳しかったりするので、外資系企業の90%以上が有限会社であると言われています。

ベトナムの法務関係、会社設立情報についてはJETROさんのどこよりも詳しいので詳しくは資料をご参照下さい。

ベトナムでの会社設立には統一企業法と投資法が関わってきますが、2015年に大幅な改定があり、審査のプロセスが簡素化したり、IRC(投資登録証明書)とERC(企業登録証明書)に分かれてローカル資本の企業と同じERCを使用するようになったりという変化がありました。

出資形態を決める

法人形態が決まったら次は出資形態を決めます。
外国人個人による出資なのか、日本の会社の子会社を設立する法人出資なのかを選択します。
なお、支店を設立したいという話をよく聞くのですが、支店は銀行など一部の業態にだけ認められていて、一般の企業は法人出資による子会社の設立という形になります。

駐在員事務所ってなに?

駐在員事務所とは、本社との連絡業務、ベトナムでのビジネスパートナーを探したり、仕入先、顧客先等の市場調査をしたりするための組織で、日本で設立1年以上の法人が設立することができます。

駐在員事務所と有限会社(株式会社)の違い

法人格 あり なし
責任範囲 出資の範囲 全ての責任は最終的に本社が負う
活動範囲 IRCで認められた一切の営業活動 市場調査のみ、契約など利益が発生する一切の営業活動は認められない
VAT控除 条件を満たせば可能 不可
お金のやりとり 出入金自由 一切の入金が認められない
投資 国内外への投資可能 一切の投資が認められない
活動機関 最長50年 5年(更新可能)

こうしてみると駐在員事務所のメリットというのはほとんどないように感じられます。
後述しますが、設立に必要な書類も有限会社(株式会社)と駐在員事務所ではあまり変わりません。決算がないというのは利点ですが、活動の報告と費用の清算はしなくてはいけません。

また、市場調査を終えていざ法人を設立だ!という事態になった時に、法人の設立の前に駐在員事務所の閉鎖の手続きをしなければならないので、法人を設立してしまったほうがてっとり速いと思います。

設立に必要な書類を準備する

個人出資の場合

日本で準備する書類

銀行の残高証明
その後書類を認証が必要(後述)

ベトナムで用意するもの

事務所の賃貸契約書
パスポートの認証コピー

はい、以上です。
ベトナムで銀行口座を開設して残高証明を取得することもできますが、その場合、
1)銀行口座を開設
2)日本から送金
3)残高証明書を発行してもらう

というプロセスになり、面倒です。
近年、外国人個人がワークパーミットなしに銀行口座を開設するのが難しくなってきている点も要注意です。
また、現金で入金する場合、その現金をどこから持ち込んだのかを証明するように求められることがあります。その場合、ベトナムに5000USD以上の現金を持ち込む場合は、税関での申告が必要で、その申告書を銀行に提出しなければなりません。
しかも、会社設立後に法人口座を開設して資本金を払い込む際にこのお金を使うことはできません。
法律では会社設立後90日以内に資本金を海外からベトナム国内の資本金口座に送金すると規定されているのです。

法人出資の場合

日本で準備する書類

日本法人の定款
履歴事項全部証明書
決算書2期分
日本法人の代表者のパスポートコピー
定款と履歴事項全部証明書、パスポートコピーは認証が必要(後述)

※決算書は通常2期分必要ですが、初年度で決算を終えていない、2期目を終えていない法人でも資本金が十分あり、業績が好調で債務超過の状態でなければ設立が不可能なわけではありません。

ベトナムで用意するもの

事務所の賃貸契約書
パスポートの認証コピー(現地法人の代表者)

それでは書類の日本での認証方法を確認しておきましょう。

認証方法

ベトナムはハーグ条約という外国公文書の認証を不要とする条約に加盟していないため、登記簿謄本等の公文書は法務局長印をもらったあと、外務省で公印確認をもらい、ベトナム大使館(領事館)で領事認証を受ける必要があります。
定款や銀行の残高証明等の私文書は公証役場で面前認証という公証人が見ている前で,文書作成者が署名や押印をしたことを認証する作業が追加で必要です。

定款は法人が発行する書類のため、会社の代表取締役以外の代理人が公証役場で認証を行う場合は委任状などの書類が必要になるためご注意下さい。
事前に最寄りの公証役場でベトナムに提出する書類の認証をしたいという旨を伝えて、必要書類を確認して頂くことをオススメします。

※東京・神奈川・大阪の一部の公証役場では法務局長印、外務省の公印確認をまとめて対応してくれるワンストップサービスを提供しています。

※パスポートのコピーについては、表紙、背表紙と個人情報ページのほか、入出国印が押してある全ページが必要となります。

※定款とパスポートのコピーは同じ私文書なのでまとめて1冊にして認証すると公証代金を節約することができるのですが、提出場所が違うため、別々に認証して頂く必要があります。

申請書類を準備する

申請書類は代行業者が用意します。
法人設立のために必要な情報は、下記の4つです。
-会社名
-資本金額
-決算時期(3,6,9,12月から選択)
-事業内容

その他出資者の情報が必要です。
個人出資の場合にはパスポートの情報と日本の住所、現地法人の代表者になる方はベトナムでの所在地と電話番号、Emailアドレスも必要になります。

法人出資の場合は履歴事項全部証明書にある法人番号や所在地、代表者のパスポート情報などが必要になります。

書類にサインをして提出する

申請書ができたらサインをする必要があります。
ベトナムはサイン社会です。法人ができたあとは、代表者のサイン+会社印の捺印を以て会社の文書が成立します。

サインは主に現地法人の出資者と法人出資の場合は日本本社の代表取締役のサイン+日本法人の代表印の捺印が必要になります。
日本では押印は代表者の名前の右側というのが一般的ですが、ベトナムでは名前の左側で、しかも印鑑は名前に被るように捺印しなければなりません。
近年では黒ボールペンでも認められることは多くなってきましたが、青いボールペンでサインをして頂いた方が無難です。ベトナムではサイン関係は青いボールペンを使用します。

複数の出資者がいる場合は、出資者一覧や定款草案にはサインをしてもらうことになります。

書類を提出して結果を待つ

申請書類にサインが終わったら、書類を提出して結果を待つのみ。
外国企業はまず投資登録証明書(IRC)を取得し、その後に企業登録証明書(ERC)を取得します。審査期間はそれぞれ15営業日、3営業日です。
IRCについては事業内容によっては追加で質問が来たり、関係省庁へ書類が回るため、15営業日以上の日数が掛かる場合があります。

ERCが取得できたらあとは印鑑を作成し、オンラインで会社情報を公示して設立完了です。
企業登録証明書に記載されている番号が税金番号になります。

会社設立後に必要な作業

会社の設立が完了したら、事業開始に向けて人材の採用やオフィスの準備等があるかもしれませんが、いくつかの手続きも必要になります。

– 法人口座の開設と資本金の送金(法人設立後90日以内)
※ベトナムでは資本金口座という資本金専用の口座が存在するのでご注意下さい
-ビジネスライセンス税の支払い(法人設立後30日以内)
※資本金が100億ドン(5億円)以下であれば200万₫(≒1万円/年)になります。
会社設立完了(ERC発行日)が7月以降であれば初年度は半額ですみます。

-税務関係の作業
※会計サービスに依頼して申請をしてもらいましょう。

まとめ

さて、ここまでかなり長い道のりでしたが、会社設立が完了してからが本番です。
オフィスの準備や人材採用、人材育成やベトナムでの営業戦略も考える必要がありますね。

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管理人
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ベトナム起業10年目。 アジア発のグローバルアプリサービスを作るため、ベトナム人チームをまとめて精進しています。 長年のビジネスで培った見識を生かして現地のリアルな情報を形にして発信していきます。